夢ものがたり その4
くずし字解読
夢と奈里ぬる乎、於もへ者世尓殘る | 夢となりぬるを、おもへば世に殘る |
毛の那し。雪花紅葉も皆 | ものなし。雪花紅葉も皆 |
夢と見る/\よそのことく於もひ | 夢と見る/\よそのごとくおもひ |
奈して、おとろく那し。口尓のミ語り | なして、おどろくなし。口にのみ語り |
天まことの夢能こと者里乎志る | てまことの夢のことはりをしる |
人那し。唯釋尊者其おろ可 | 人なし。唯釋尊は其おろか |
奈る心乎さとし天、此世尓有うち尓 | なる心をさとして、此世に有うちに |
思ひ無すほ本禮多るをと紀て、こゝろ | 思ひ無す結解れたるをときて、こゝろ |
一口メモ
3行目、 「おもひなす(思ひ成す)」=思い込む。 2行目、 「雪花」=雪を華にみたてていう。 5行目、「ことはり(理)」=道理。 8行目、「無すほ本禮多る(結ぼ解れたる)」は、解けなくなるほど、しっかりと結ばれる、からみつくと言う意味です。
【意訳】
(皆)夢となってしまったことを思うと、この世には何も残っていない。花のように綺麗な雪も紅葉した葉も、すべて夢のような世界と思い込んで、目覚めることもない。口に出して言うだけで、本当の夢の道理を知っている人はいない。ただ、お釈迦様だけは、そのおろかな心を納得するように教え導いて、この世に生きているうちに絡みついた思い込みを解いて心(安く過ごしなさいと)