夢ものがたり その1
くずし字解読
夢毛の可多理 七十二翁 廣川 | 夢ものがたり 七十二翁 廣川 |
東照神君といへる聖主廼 | 東照神君といへる聖主の |
治めたまへる、大日本能國も、時や | 治めたまへる、大日本の国も、時や |
来里介無。多ゝ可者須し天、於のつ可ら | 来りけむ。たたかはずして、おのづから |
三百年も、治平を多も知堂る | 三百年も、治平をたもちたる |
國主爵位も、ともにあつ歟(か)り給へり | 国主爵位も、ともにあづかり給へり |
し國乎、天朝尓返し末つ禮る | し国を、天朝に返しまつれる |
世尓、生禮逢つるも、夢の心ち世良 | 世に、生れ逢つるも、夢の心ちせら |
留禮。おの連、天保十四年といふ尓 | るれ。おのれ、天保14年といふに |
一口メモ
上記の「夢ものがたり」は、当家12代(高見怘)が、京都大徳寺高桐院の菴から熊本に戻る前年に、己の人生を振り返った文章です。5回に渉って掲載します。
1行目の「翁」は、自称の場合は、へりくだった意味を持ちます。 「廣川」は、高見怘の雅号です。 2行目「東照神君(とうしょうじんくん)」=徳川家康公。「聖主」=すぐれた君主。 「時や来りけむ」=時が来たのであろうか。 6行目「国主爵位」は、大名と貴族階級。
【意訳】
徳川家康という優れた君主が治めた日本の国も時代が変わったのであろか。戦争もなく、300年も平和を維持した大名・貴族達も一緒に関与した国を朝廷に返上された時代に生まれ出会ったのも夢のようだ。私は天保14年(1843)に