伊勢参宮日記 その19
くずし字解読
明治二十二年二月十一日。紀元節憲法發 | 明治22年2月11日。紀元節憲法(大日本帝国憲法)の発 |
布の詔を下し給ひし事を聞て、作長歌、并 | 布の天皇の命令が下された事を聞いて、長歌ならびに |
短歌。 | 短歌を作った。 |
掛巻も、綾尓かしこき、御鏡尓、剱と玉乃、ミ | 掛巻(かけまく)も、綾にかしこき、御鏡に、剱と玉の、御 |
多可良を、い者ひ奉りて、朝夕尓、王禮を忘須、 | 宝を、祝い奉って、朝な夕なに、我を忘ず、 |
大八島、衣毛らぬ國を、志らセよと、能良セ給ひし、 | 大八島(大八洲=日本)、えもらぬ国を、知らせよと、宣せ給ひし、 |
大御言、其神代より、今日まても、多ゆること | 大御言、その神代の昔から、今日までも、絶えること |
奈く、樛の木能、いやつき/\尓、天のし多、志ろし | なく、樛の木の、いや継ぎ継ぎに、天の下、しろし |
めしゝを、今更尓、何あらためて、日本の、於き天と | めししを、今更、何をあらためて、日本の掟(おきて)と |
一口メモ
前頁まで、「伊勢参宮日記」が綴られていましたが、この頁は翌年の大日本帝国憲法の発布に伴って、その感想が付け加えられています。
5行目の「掛巻(かけまく)も」とは、「口に出して言うことさえも」という意味です。「綾にかしこき」は、「言い表しようがなく恐れ多い」という意味です。「御鏡に、剱と玉の」は、八咫(やた)の鏡と、草薙の剣、八尺瓊(やさかに)の勾玉(まがたま)で、いわゆる三種の神器です。
6行目の「大八島(おおやしま)」とは、大八洲つまり日本を意味します。「えもらぬ国」=「とても漏らすことのできない、大事な国」。「のらせ(宣せ)給ひし」=「仰せになられた」。
7行目の「大権現(おおみこと)」=「天皇の仰せ」
8行目の「樛の木の」は、次の「いや継ぎ継ぎに」を導きだす序詞として機能しています。天皇がつがの木のようにつぎつぎ続いて絶えることが無いという意味です。「天の下」=「日本全国」。「しろしめししを」=「お治めになったのを」。