伊勢参宮日記 その5
くずし字解読
伊勢の宮に、年を迎つ、おもふ事、今年ハか奈ふ、志るしなるらん。 | 伊勢神宮に新年を迎えて、色々と考えていることが今年こそ叶いそうな気がするのだ。 |
二日晴。午前七時、長沼楽夫を訪。伊勢津ニ奉職。 | 1月2日 晴れ。午前7時、長沼楽夫宅を訪問した。彼は伊勢の津で公職に就いている。 |
宿尓あら須。家内、よろこひて、寝末きの末ゝ、出迎ふ。 | あいにく家には居なかった。奥方は喜んで、寝まきのままで、出迎えてくれた。 |
志者し、毛の可多里して、開明楼尓、ありといふ、さらは | しばらくの間、話をしたが、本人は開明楼にいるはずだと言ったので、それでは |
とて、行て見る尓、者多し天逢ぬ。去年より遊ひ | と言って、そこに行って見ると、案の定逢うことができた。去年末から遊んで、 |
天、今ニかへら須と云、夫より直ニ、酒肴を持出し天、 | 今だに帰っていないと言う。それからすぐに、酒・肴を持ち出して、 |
ともにあそふ。うめさくら、色をあらそふ、女とも出多り | 一緒に遊んだ。梅と桜が美を競うように、いずれ劣らぬ美人ぞろいの女性達が参加した |
多め尓、心も能と可尓奈りぬ。 | ので、大いに盛り上がった。 |
現とも、おもはさ連介り、逢ミしハ、その末ゝ夢の、心知のミし天。 | いざ逢ってみると、そのまま夢心ちだけがして、現実とは思えなかった。 |
一口メモ
最初の行は、何故か前頁の最終行と同じでした。
長沼楽夫氏は、どんな人物か未だ不明です。また、伊勢の「開明楼」は未確認です。7行目の「うめさくら」は上記の通り、梅と桜が美を争うように」と武田様に、ご教授いただきました。ありがとうございました。
色っぽいですね。
「色をあらそふ」は、梅と桜が美を競うように、いずれ劣らぬ美人ぞろい、といった意味ではないかと思うのですが。
どうも遊郭のようですね。
武田智孝様
コメントありがとうございました。ご指摘の通りですね。訂正させて頂きました。その方面は、疎いものですので、気が付きませんでした。