伊勢参宮日記 その3

熊本大学附属図書館所蔵 高見家文書 #5018-1
湖水を蒸氣尓て渡る。夕雨。石部一泊。琵琶湖を蒸気汽船で渡った。夕方には雨となり、滋賀県湖南市石部に一泊した。
三十一日晴。四時過より出車。鈴鹿山を越ゆ。雪三十一日晴れ。早朝四時過に人力車にて出発。鈴鹿山を越えた。雪が
不る月、いとあ可し。降っている月は、大変明るく見えた。
ミやこ尓盤、ま多見志らぬ、しら<乎>雪の道を今日、鈴鹿の山尓見そめつる哉。京都では、まだ降っていなかった白雪の道を、今日は、鈴鹿の山で見ることが出来た。
さら天多尓、傅多る月を、有明の、雪尓ミ可介る、影の寒介さ。そうでなくてさえ、出ている月を、明け方に、雪の中で見るのは寒々しい。
雪介ふる、鈴鹿おろしの、朝風ハ、身尓こ多へ天も、寒介可り介里。雪が混じる、鈴鹿颪の朝風は、身にこたえるほど、寒かった。
立可へり、あ須こむ年を<も>、ゆ多介けさ能、あらましミセて、つもる雪可奈。     明日になれば、又やってくる新年が、富み栄える事を、示唆する様に、雪が積もっている。
午后五時過、山田尓着。上田吉太郎に宿ス。いと、きよら午後五時過ぎに、宇治山田に到着。上田吉太郎の家に泊まる。大変清潔な
奈る家なり。木庭来る。一酌して臥ぬ。家だ。木庭が尋ねて来る。軽く酒を交わして寝る。

Googleマップで、滋賀の石部から宇治山田までは、98km、徒歩では23時間かかり、人力車では、歩く半分の時速8~10kmで比較すると、10時間程度になりますが、鈴鹿峠という難所があるため更に時間がかかった筈です。

石部の標高は、150m程で、鈴鹿峠の標高は357mですので、高低差は余り大きくありません(道を作るときは当然高低差の小さなルートを選ぶ筈です。鈴鹿峠は、鈴鹿山で、一番低い場所になります)。

石部からは、34kmの距離のだらだら坂を上って行く事になります。早朝4時過ぎに出発していますので、3時間半で峠に到着するとすれば、午前7時半頃となります。一方1月1日の鈴鹿の日の出時刻は7時頃ですので、実際はもっと早く到着していた可能性が高くなります。但し、峠の日の出は、平地よりもかなり遅くなることも考えられます。

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