当家に関わる諸控 その21

熊本大学附属図書館所蔵 高見家文書 #3022
      右之趣若於違背仕者      右の趣旨に、もし、違背する場合は
忝茂恐れ多くも
  梵天、帝釋、四大天王、摠而、日本六十余刕大  梵天,、帝釋天、四大天王は、全て日本の六十余州の大
  小之神祇、別而者、熊野大権現、春日大明神  小の天の神と地の神、とりわけ熊野大権現春日大明神
  天満大自在天神、當國之鎮守阿蘓大明神  天満大自在天神、富国の鎮守である阿蘇大明神
  藤崎八満大菩薩各罷蒙  藤崎八旛宮(熊本市井川淵町にある神社)それぞれ進んでお参りをします。
  御罸於今生母者受白癩黒癩之重病於来世者  罸については、この世に生きている限り、母者(ははじゃびと)は白癩黒癩(ハンセン病)の重病を受け,来世においては
  随在、無間地獄、更不可在浮世者也。仍起證文  最も苦しい地獄である無間地獄(阿鼻地獄)に従い、更にそのあるがままにまかせます。以上の通り、起證文は
  如件  右の通りです。
    右之通申上候而茂若心底ニ切支丹宗門を相守可申儀可有    以上の通りに申し上げても、もし、心から切支丹宗門を守るという申し入れがあれば、
    之哉と彼宗旨之罸久仕差上申候    どう処置すればよいか、その宗旨の罸をうけることに甘んじます。
  でいうす、ばてれん、ひいりよす、いりつせんと、を初奉り  Dius Fidius(古代ローマの最高神)、padre(ローマ・カトリック教会の司祭、父)、Hiryosu(子)、Iritsu Sento(?)、を初めとして敬って
  さんたまりや、諸のあんしよへ、あとの御罸を蒙り、でう  サンタマリア、諸々の人目の付かない場所へ、後の罸を蒙り、デウス
  すの、からさたへはて、しゆらたすのことごと、たのもしを失ひ          からの精神的・身体的な苦痛に耐え、阿修羅(醜い争いや果てしのない闘い)のことごと、信頼を失い、
  後悔之一念もきさらずして、人々の嘲と罷成、終尓頓死  後悔の一念も切らさないで、人々からばかにされて悪く言われたり笑われたりされて、ついには急死
  仕、いんへるのゝ苦患にせめられ、浮事有る間敷候仍切支丹          してしまい、地獄の苦患にせめられ、浮かれるような事はないであろう。よって、切支丹
  宗旨のしゅらめんと如件  宗旨の南蛮誓詞は以上のとおりです。
    年号何 何々 年何月    何之何某    年号は、和暦何々年何月    何の誰それ

前頁から続く「宗門誓詞」は、キリシタン禁制に関する届け書で、前頁で寺の証明をとって提出する誓詞の形式が説明され、この頁では、日本の神々に誓う形での文書が、更に、キリスト教の神々にも誓う文書の説明が続きます。

3行目の「梵天帝釋四大天王」について、仏教で説かれている人格である「梵天」(ぼんてん=男性の最高神)と、「帝釈」(たいしゃく=帝釈天)は、共に仏法を守護する役割を与えられた仏教の二大護法善神のことです。また、「四大天王」は四方鎮護・国家守護の四神で、東方の持国天・南方の増長天・西方の広目天・北方の多聞天(毘沙門天)のことで、梵天と帝釈天に仕える神々です。 「神祇(じんぎ)」とは、天の神と地の神のことです。

後頁の仮名文字は、大変味わい深く、変体仮名も交じり、合字(5行目の「こと」)も含まれています。ひらがなはポルトガル語を表しており難解です。一部誤読もあるかも知れません。

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