当家に関わる諸控 その10
くずし字解読
熊入村 | 熊入村(くまいりむら=熊本県山鹿市熊入村) |
一 餅粟 壱升 一 莚 弐枚 | 一 餅粟 1升 一 莚 2枚 |
一 釣瓶縄 二筋 | 一 井戸の釣瓶用の縄 2セット |
右暮拂分 | 以上は年末支払い分です。 |
一 夫銀 四匁 立寄之節拂分 | 一 夫銀 4匁 立ち寄りの際に支払った分です。 |
宗門覚書並諸差出之扣 | 宗門についての覚え書きと諸々の差し出し状の控え。 |
竪紙 | 用紙は竪紙(たてがみ)を使う。 |
覚 | 覚 |
切支丹宗門之儀従前々無懈怠今以相改申候先年 | キリシタンの宗門について前々から今迄怠りなく、取り調べています。先年 |
従 | |
公義被 仰出候御法度書之趣奉得其意弥以 | 公義から、お言いつけされたご法度書の趣旨を、いよいよもって得て |
私家内者不及申家来末々男女至迄堅相改 | 私の家内は及ばず、家来達末々の男女に至るまで、しっかりと調べ上げ |
申候処不審成者無御座候尤触状判形取置申候 | ましたところ、不審の人物はいませんでした。もっとも、お触れを知らせる書状は判形を取得しておきます。 |
若相替儀御座候ハゝ急度可申上為其如斯御座候 | もしも、変わったことがあった場合は、確実にそのことを申し上げます。 |
一口メモ
「宗門覚書」とは、キリシタンの禁圧、摘発に関係する覚え書きの意味です。
文中に、「竪紙(たてがみ)」とありますが、これは和紙を漉く際には横長の漉桁(漉き道具)を用いることから、横長にて利用すると漉目は竪(縦)に奔ることになる。そのため、漉目に逆らわないように横長の形状にして漉目と並行するように文字を記した。1枚の紙を横長の形にして、上から下に文字を記すようにする形状のことを「竪紙(たてがみ)」と言います。
「従」改行して「公義」とありますが、これは「平出(へいしゅつ)」と言って「公義」に対して敬意を表すために改行して書き出す方式です。又、「闕字(けつじ)」と言って、改行せずに1文字または2文字分の空白を置いて、敬意を表す方式もあります。
「御法度書」とは、禁止されている項目が書き出されたものを指します。
「判形(はんぎょう)」とは、花押などの書き判、または印章を意味します。