当家に関わる諸控 その8

熊本大学附属図書館所蔵 高見家文書 #3022

くずし字解読

   一 たにし   一芭    三月節句前拂   一 たにし   一芭    三月の節句用で前払い
   一 竹の子   一把    五月節句前拂   一 竹の子   一把    五月の節句用で前払い
   一 栗     一芭    九月節句前拂   一 栗     一芭    九月の節句用で前払い
庄村庄村(しょうむら=熊本県飽田郡庄村)
   一 竹箒    三本    一 莚   四枚   一 竹ぼうき   3本    一 むしろ   4枚
   一 釣瓶縄   二筋    一 杵   四本   一 釣瓶用の縄  2筋    一 杵(きね) 4本
   一 縄     壱束    一 もつこ 一ツ   一 縄      1束    一 もつこ 1つ
   一 麦からこも 八枚    一 藁   弐束   一 麦からこも(麦わらで作った菰) 8枚    一 わら   2束
   一 裏白          一 根引松   一 裏白(ウラジロ科のシダ植物)        一 根引き松
   一 鶴の羽         一 橘   一 鶴の羽         一 橘
   一 だいだい  拾五    一 だゞいげ 一把   一 だいだい  15    一 だゞいげ(だらいげ=タラノキ) 1把
   一 米作初穂  五升   一 今年実った稲穂  5升分
   一 飾竹大小  弐束  六寸廻 四本   一 飾り竹の大小  2束  周囲が6寸(約20cm) 4本
               五寸廻 弐本                 周囲が5寸(約17cm) 2本
   一 葉竹    弐拾四本   一 葉の付いている竹    24本
     右暮拂分     以上は暮れ払い分。
   一 たにし   一芭  三月節句前拂   一 たにし   1芭   三月節句用に前払い
   一 竹の子   一把  五月節句前拂   一 竹の子   1たば  五月節句用に前払い
   一 なすび       七月節句前拂   一 茄子         七月節句用に前払い

一口メモ

領地より治められる「年分の払い物」は、季節性が強く現れています。各節句ではその時の収穫物が治められ、年末には、生活必需品や正月の飾り物の材料が目立ちます。裏白や橙は鏡餅の飾り、根引松や飾り竹は門松飾り、葉竹はすす払い用でしょうか。稲穂は注連飾り、鶴の羽は長寿の縁起物でしょうか。色々と想像できて楽しいですね。

「払い物」は、農民にとっては貴重な現金収入となったことでしょう。

当家に関わる諸控 その8” に対して2件のコメントがあります。

  1. 武田智孝 より:

    毎回興味深く拝見しておりますが、今回は「たにし」が出てきておぉーと思いました。幕末のころから明治にかけては、いやひょっとすると昭和戦前まではまだ「たにし」が普通に食べられていたのですかね。
    漱石の
    ぶつぶつとおおいなる田螺の不平かな
    という句を思い出しました。漱石も煮て食ったのですね。ひょっとすると小生も子供のころ食べたかもしれません。田んぼとか小さな用水路などで採れるのです。

    1. 高見洋三 より:

      武田智孝様
      コメントありがとうございます。
      田螺は、小生も良く存じていますが、残念ながら、食べたことはありません。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

和歌

前の記事

松の落葉 その29
和歌

次の記事

松の落葉 その30