古今集序 その1
くずし字解読
巻頭
於も可介乎かひ那しつる毛の な李 | 面影を甲斐なくしてしまった者である。 |
大正三年十二月廿七日 しる須 | 大正三年十二月廿七日 記す |
本文 頁1
古今集序 | 古今集序 |
やま登宇堂盤、人野こゝ呂乎 | やまと歌は、人の心を |
多年とし天、よ呂津乃ことの葉とそ | 種として、よろづの言の葉とぞ |
な禮李計る。世野中耳ある人、 | なれりける。世の中にある人、 |
ことわさ、津奈幾毛の那連は、心尓 | 事業(ことわざ)、繁きものなれば、心に |
於毛ふこと乎、見るもの聞物に | 思ふことを、見るもの聞くものに |
津介て、いひ出世る奈李。花尓鳴 | つけて、言ひ出せるなり。花に鳴く |
う具飛西、水尓春無か者須乃 | 鶯、水にすむ蛙の |
聲乎幾計者、以起とし生る | 声を聞けば、生きとし生ける |
毛の、以須連可歌乎よ末さり介流。 | もの、いづれか歌を詠まざりける。 |
知可良越毛以連須し天、あめ徒知 | 力をも入れずして、天地 |
乎宇こ可し、め尓見えぬ鬼神 | を動かし、目に見えぬ鬼神 |
を母、阿者禮と於毛者世、於登古 | をも、あはれと思はせ、男 |
女能中越もや者良介、多計幾 | 女の仲をも和らげ、猛き |
毛能ゝ婦乃こゝ呂越も、奈くさ無る | 武士(もののふ)の心をも、慰むる |
一口メモ
上記画像は、かの有名な「古今和歌集」の「かな序」で、紀貫之が書いたものとされますが、当家十二代が巻物に書き写したもののようです。
文体は、いわゆる変体仮名で書かれていますが、古文書類を解読する上で、恰好な教材と思いましたので掲載させて戴きました。誤読があるかも知れませんので、宜しく添削をおねがいします。
尚、このシリーズは3頁にわたって掲載させて戴きます。
古今和歌集の仮名序は文字通りほぼかなで書かれていて、私の調べたところでは、
「やまとうたは、人のこゝろをたねとして、よろづのことのはとぞなれりける。よの中にあるひとことわざしげきものなれば、心におもふ事を、みるものきくものにつけていひいだせるなり。はなになくうぐひす、みづにすむかはづのこゑをきけば、いきとしいけるものいづれかうたをよまざりける。ちからをもいれずしてあめつちをうごかし、めに見えぬおにかみをもあはれとおもはせ、をとこをむなのなかをもやはらげ、たけきものゝふのこゝろをもなぐさむるはうたなり。…」といった具合なのですが、ご先祖はかなりの部分を変体仮名に直しながら書き写されたのでしょうか。
武田智孝様
コメントありがとうございました。貴殿のコメントは一度承認されると、以後自動的に承認されてきましたが、今回は何故かそうなっていませんでした。
仮名序の原文がどのような文字で記述されていたか確認できていませんが、筆者は、画像の通り、草書体で表記されています。私の推測ですが、草書は視覚に訴える部分があるようで、文字の流れによっては、わざわざ変体仮名を多用して美的な主張をしているのかも知れません。
当時のかな文字は表音で意味を、視覚で文字のバランスを楽しんでいたのかも知れません。
短冊や色紙に書かれた変体仮名は本当に、美しく感じ取れます。原文を探しましょう。
こんにちは、いつもありがとうございます。
巻頭の「於も可介乎かひ那しつる毛の な季」の最後、タイプミスだと思いますが、「な李」と思います。
前川様 いつもお世話になります。ご指摘のとおりです。ありがとうございました。