在勤拝領之品付(九代武久) その10
くずし字解読
同年二月 | 天保7年(1836)2月 |
一 御膳部 一品 | 一 膳にのせて出す料理、を一品 |
右同日 | 右と同じ日 |
御長棹入込左之通 | 長棹(ながさお=長持)に入っているものは次の通り。 |
一 鶴蒔絵御文庫 但御文庫入組左之通 一 桑御猪口盃 二 但内朱 一ツ鶴之繪 一ツ亀(?)之繪 | 一 鶴の蒔絵の文庫(ふみぐら=書庫) 但し文庫に入っているものは次の通り。 一 桑のおちょこのさかづき、を二つ。 但しさかづきの内側は朱塗りで 一つは鶴の絵、一つは亀の絵が描いてある。 |
一 備前焼福禄寿 一 | 一 備前焼の福禄寿、を一つ。 |
一 御小蓋物 鶴染付 一 | 一 小蓋物(こふたもの=蓋付きの小さな容器)で、鶴の染付が施されている、を一つ。 |
一 木彫おふく人形 一 | 一 木彫のお多福の人形、を一つ。 |
一 切子御筆洗 一 | 一 切子(きりこ=切り子ガラス)の筆洗い、を一つ。 |
一 古銅花藏(?)御水入 一 | 一 古銅(こどう=古代の銅器を写した銅を主体にした錫・鉛の合金)花藏(?)の水入れ、を一つ。 |
一 銀御水入 千鳥片切彫 一 | 一 銀製の水入 但し、千鳥の片切彫(たがねを用いて、線で文様を表わす彫金法)、を一つ。 |
一 青貝唐獅子研出蝋兵八角御肉入 一 | 一 青貝(あをがひ=螺鈿の材料に用いる貝)の唐獅子を磨き出した蝋でできた武具の八角の印肉入、を一つ。 |
一 三ツ組松竹梅高蒔絵御盃 一品 | 一 松竹梅の三組の高蒔絵(蒔絵の一技法で、文様を適当な高さに肉上げして施したもの)の盃、を一品。 |
一 木彫七福神 七 | 一 木彫の七福神、を七つ。 |
一 木彫大黒恵び寿 二 | 一 木彫の大黒恵比寿、を二つ。 |
一 麦藁細工御爪入 一 | 一 麦藁細工の爪入、を一つ。 |
一 しんちう御きせる 一本 | 一 真鍮(しんちゅう=亜鉛と銅の合金)のきせる、を一本。 |
一 銀花筏文鎮 一 | 一 銀製の花筏(はないかだ=花の折枝を筏に添えた文様)の文鎮、を一つ。 |
一 桃弁御手遊人形 一 | 一 桃の花びら模様の手遊び人形、を一つ。 |
一 暦張御楊枝台 一 | 一 暦が張ってある楊枝を入れる台、を一つ。 |
一 御舩守紙雛 一品 | 一 船の安全を祈願する紙で作った男女一対のひな人形、を一品。 |
一 小御捨物 牡丹にらみ 一 | 一 不要になった小さな牡丹にらみ(?)、を一つ。 |
一口メモ
諦了院様(熊本藩第八代藩主細川斉茲公)がお亡くなりになり、当家の系図には、「諦了院様のお道具のうち、太守様、蓮性院様の思し召しで夜具、その他お膳周りのこまごまとした品々、長持などを戴いた。但し、この一連の遺物拝領の品々と、そうでないものの区別はされていない。」と記されています。
上記の品々を解読するのに大変苦労しました。特に「亀(?)之繪」、「花藏(?)」、「牡丹にらみ(?)」などは、くずし字も然る事ながら意味が良く判りません。皆様の御指導を大いに期待したいところです。
「尓らみ」は、本当に「にらみ」で良いのでしょうか?良いとすれば、その意味は? ネットによれば「箪笥牡丹図睨み鍵金具」なるものがヒットしました。ひょっとしたら、「不要となった睨み鍵金具」の事かも知れません。