在勤拝領之品付(九代武久) その3
くずし字解読
一 御色紙 一枚 | 一 色紙(しきし=和歌・書画などを書き記す四角い厚紙)、を一枚。 |
一 御鼻紙挟 一 | 一 鼻紙挟(ふところ紙を挟む道具)、を一つ。 |
一 御扇子 一本 | 一 扇子(せんす)、を一本。 |
一 御石筆 一本 | 一 石筆(せきひつ=粘土を固め筆の穂の形に作り、管に挟んで書画を書く道具)、を一本。 |
一 御喜世留 一本 | 一 キセル(煙管)、を一本。 |
一 御小蓋 一枚 | 一 小蓋(こぶた=小蓋物、ふたのある小さな容器、会席用など)、を一枚。 |
一 御汗取 一 | 一 汗取りを、一つ。 |
右 諦観院様御道具之内被下置候 | これらの品々は、諦観院様がお使いになっていた道具の一部を(形見分けとして)戴いたものです。 |
文政九年五月十六日 | 1826年5月16日 諦観院様の骸を国元へ送る途中の鈴鹿関で、期待通りの勤めをしたので戴いた。 |
一 越後嶋(縞) 二端(反) | 一 越後縞(えちごしま)、を二反。 注)縞とは、織り柄のひとつで、2種以上の色糸を用いて、織物の経(たて)または緯(よこ)、あるいは経緯に種々の筋(線)を表したもの。 |
同 | 同じく、1826年5月16日 諦観院様がお召しになっていた古着のうち、次を戴いた。 |
一 葉桜御紋附裏附御継上下一具 | 一 葉桜の紋附で裏附の継裃、を一揃い。 |
一 御紋附絨御熨斗目 一 | 一 紋附で柔らかい糸の熨斗目、を一つ。 |
一 五三桐御紋附縮緬御袷 一 | 一 五三桐の紋附で縮緬の袷、を一つ。 |
一 同御紋附縮緬袷御羽織 一 | 一 同じく五三桐の紋附で縮緬袷の羽織、を一つ。 |
一 厚板御野袴 一具 | 一 厚板(あついた=厚地織物、生糸を横糸、練り糸を縦糸として、模様を織り出した絹織物)の野袴、を一揃い。 |
同年同月九日 | 1826年5月9日 家督のお祝いで蓮性院様(諦観院様の正室)から戴いた。 |
一 夏御袴地 一具(反) | 一 夏用の袴地、を一揃い(一反)。 |
同年同月十八日 | 1826年5月18日 家督並びに元服のご用を勤めたので、お祝いとして、殿(10代細川齋護公)の御前にて戴いた。 |
一 御紋附長御上下 一具 | 一 紋附の長裃、を一揃い。 |
一 同御半上下 一具 | 一 紋附の半裃、を一揃い。 |
一 同御熨斗目 一 | 一 紋附の熨斗目、を一つ。 |
一 同御帷子 一 | 一 紋附の帷子、を一つ。 |
一 同薄継御上下 一具 | 一 紋附の薄継裃(つぎかみしも=紋付の熨斗目小袖の上に着ける裃で上と下の共布でないもの)、を一揃い。 |
一 五三桐御紋附縮御帷子 一 | 一 五三桐の紋附の縮帷子(ちじみかたびら=縮織の麻布で作った帷子、を一つ。 |
文政九年八月廿一日 | 1826年8月21日 殿様の帰国にお供し、無事に着いたので、そのお祝いとして戴いた。 |
一 御紋附御上下 一具 | 一 紋附の裃、を一揃い。 |
一 同御帷子 一 | 一 紋附の帷子、を一つ。 |
同年十二月十五日 | 1826年12月15日 御書出(おかきだし=知行宛行状などの発給)のご用掛けを勤めたので戴いた。 |
一 同御上下 一具 | 一 紋附の裃、を一揃い。 |
一 同御小袖 一 | 一 紋附の小袖、を一つ。 |
文政十年正月廿七日 | 1827年1月27日 今年は特別にご用が具合よくまとまり、心配りなど精を出したので戴いた。 |
一口メモ
文政9年(1826)は、江戸細川藩邸にとって歴史的に大きな転換時期であったと言えます。2月12日には細川藩第九代の斉樹公(諦観院様)のご逝去、これにより、4月18日には代替わりの十代斉護公の家督元服の公義への御目見の行事があります。また、5月には諦観院様の亡骸を国元へご帰還戴くことになります。
幸いなことに、細川藩第八代の斉茲公(諦了院様)は、文化7年(1810)に家督を譲って隠居されてからも健在で、天保6年(1835)81才で亡くなられるまで江戸に滞在されて、後進の指導に当たられることができました。
当家九代は、細川藩第十代の斉樹公(泰厳院様)の江戸幕府への御目見の折には、家老代理としてお供をしています。又、諦観院様のご帰国の折にも、お供を勤めました。