上野上々地證文
くずし字解読
上野 上々地證文 改 中原利左衛門(印) | 上野にある上々地の證文で、管理責任者は 中原利左衛門(印)である。 |
猫ノ火数弐枚五百六拾八番 | 猫ノ火にある土地でその数は2枚、地番は568番。 |
一 畑六歩 御郡方野開 | 対象の畑の広さは6歩(6坪)で、郡(山鹿)管理の共同使用できる畑である。 |
運上銀壱分三里弐毛 | 税金は銀1分3厘2毛である。 |
右者私儀今度御年貢差支才覚之手立 | 右の物件は、今回私が年貢を納める手立てが |
無御座候間右野開上地ニ仕候条何方江成共御譲 | なく、この野開の土地をどちらへでも譲り |
御年貢相済候様ニ被成被下候右之野開ニ付何方より茂 | 年貢が納められるように、この野開の土地について |
構少茂無御座候尤上地紛無之為証拠御惣庄屋 | 少しも構わず、この優れた土地は紛れもない証拠として惣庄屋 |
割印申請候所之證文如件 | の割印によるこの通りの証文である。 |
天保十三年十二月 小原村上々地主 次郎七(印) | 天保13年(1842)12月 小原村上々地の主 次郎七(印) |
同村五人組 理三次(印)、同 喜右衛門(印)、同 太地右衛門(印)、 同 藤三(印) | 五人組の次郎七の仲間である残り4名。 |
右次郎七儀當御年貢差支才覚之 | この次郎七は年貢の支払いに問題があり |
手立無之抱居候野開畑上地ニ仕候間村々中 | やりようが無く、野開の畑上地について村々中で |
讃談之上貴殿方より右御年貢上納 | 相談した結果、貴方からこの年貢を納める |
被仕候ニ付右之上地證文共ニ其方江 | ということで、右の土地、証文共に貴方へ |
譲渡候尤此地方後年共ニ何方より茂 | 譲り渡し、この優れた地方につき、後年共にどちらよりも |
構出入無之候間抱地ニ相加可被申候以上 | 出入の関与がない間、所有地に加えられる。以上 |
同村庄屋 寿右衛門殿(印) 同村 吉三郎殿 | 小原村庄屋 寿右衛門殿 同村 吉三郎殿 |
一口メモ
上記の証文は、山鹿郡小原村の地主次郎七が、年貢の支払いが出来なくなったため土地を手放し、資金を得ることになりましたが、それに関連する証文です。売却先は、当時の知行地の権利者であった十代の権右衛門武棟のようです。次頁にこれに関する覚え書きを二通取り上げます。
尚、この文書の解読に当たりましては、Facebookのグループ「古文書が読みたい!」のメンバーの皆様のご協力を戴きました。ここに改めて御礼を申し上げます。
言葉の解説
上野(うえの): 土地の名前で一般的には集落の上手にある野原を指します。
上々地(じょうじょうち): その土地のランク付けで、上々地、上地、下地、下々地があります。
野開(のびらき):地域の住民が共同使用できる山林原野。
運上(うんじょう):小物成(雑税)のこと。
惣庄屋(そうしょうや):十数カ村をまとめて支配した村役人の最上位の者。
如件(くだんのごとし):この通りである(証文の末尾に用いる語です)。
五人組(ごにんぐみ):隣保(りんぽ)制度の組織で、近隣の5戸を一組とし、互いに連帯責任で種々の取り締まりや貢納確保、相互扶助に当たらせたもの。
地方(じかた):農村における民政一般。
抱地(かかえち):所有地。