寒山詩偈讃歌 58
276
山水不移人自老 |
山水移らず人自ら老ゆ。 |
いくよろず | みやまに年を | 重ね來て | われより後の | 人おくりけむ |
多くの歳月をこの人里離れた深山で生活しているうちに、いつの間にか自分よりあとから生まれた人々が、先立たれたのであろうか。
277
黄葉落 | 白雲掃 |
黄葉落ちて | 白雲掃ふ(=払う)。 |
もみじ散る | み山の奥の | あはれさを | よはしらくもの | 我のみぞ見る |
白雲のかかるような山奥で紅葉が散る、そのえも言えぬ風情を世の人々は知らないだろうが、私は知っている(武田智孝氏訳)。
278
日出照 | 一時釋 |
日出でて照し、 | 一時に釋く(釈=とける) |
雪こほり | とけてのどかに | さしのぼる | ひかげに老も | 春をしるかな |
雪や氷が解けて穏やかに日が昇り出す景色は、老いたこの身にも、春が近いことに気づく。
279
白雲中 | 常寂寂 |
白雲の中 | 常に寂寂 |
世のちりを | へだつる嶺の | しら雲と | しづかに身をば | まかせてぞすむ |
世俗の汚れから隔てられている嶺に湧き立つ白雲に、身をゆだねて住むのは何と心地良いことであろうか。
280
泉聲響 | 撫伯琴 |
泉聲響きて、 | 伯琴を撫す(ぶす=なでる)。 |
谷水の | ながるヽ音を | たゞひとり | 緒琴にかへて | きくぞたのしき |
谷間を流れている水音を、琴の音色と見立てて聞くのは、何と楽しいことであろうか。
一口メモ
上記画像は、祖厚禅師の一周忌にちなみ、弟子達が献詠された歌の2枚目の画像です。