寒山詩偈讃歌 57
271
解用無方處處圓 |
用ふることを解(げ)すれば無方にして處處圓(まどか)なり。 |
こヽろして | 照さゞりせば | 月と日の | ひかりもくまは | あるべきものを |
月や太陽でも注意深く照らすことを怠れば、その光に隈(陰り)が生じてしまうだろう(武田智孝氏訳)。
272
悠悠世事何須覓 |
悠悠たる世事何ぞ覓む(とむ=求)るを須(もち)ひん。 |
世の中の | 事をもとめて | 何かせむ | 身を雲水に | まかせたらなむ |
諸国を行脚して修行をすれば、世俗の事などを気にして、何かをやろうとする様な気持ちには決してならない。
273
遂招遷謝逐迷邪 |
遂に遷謝を招いて迷邪を逐ふ。 |
注) 「遷謝」=うつりかはり。「謝」=退き去る。
一すぢに | まことの道を | まもりなば | つひにはるべし | 月かくす雲 |
うそや偽りのない正しい道を、心を傾けて守り通せば、最後には月を隠していた雲が晴れる時が来るであろう。最後には悟りの境地に至るであろう。
274
逍遥快楽寶善哉 |
逍遥快楽寶に善哉(かな)。 |
雲水に | 身をまかせつヽ | あそぶこそ | この世ながらの | ほとけなりけり |
雲が行き、水が流れてやまないように、定めなく一所にとどまらない自由な生き様は、この世にありながら既に仏の境地である(武田智孝氏訳)。
275
碧落千山萬仞現 |
碧落千山萬仞(じん=高さや深さの単位)に現る。 |
いづる雲を | 麓になして | そびえ立つ | 高根は外に | たぐひやはある |
わき出る雲を麓に見て、そびえ立っている高い山の頂上は、他に類のない素晴らしいところだ。
一口メモ
上記画像は、祖厚禅師の一周忌にちなみ、弟子達が献詠された歌です。巻紙1巻が3枚の画像に分割されています。