寒山詩偈讃歌 53
251
今日歸寒山 | 枕流兼洗耳 |
今日寒山に歸り、 | 流に枕し兼ねて耳を洗はん。 |
山ふかく | 今日かへり来て | よの塵に | けがれし耳を | あらふすゞしさ |
今日、山奥に帰ってきて、世の中の煩わしい雑事や俗事から逃れるのは、何とすがすがしいことか(武田智孝氏添削)。
252
寂寂好安居 | 空空離譏誚 |
寂寂として安居(あんご)に好く、 | 空空として譏誚(ぎせう=とがめてせめること)を離る。 |
いづこにも | 此身はいでじ | 静なる | この山かげに | しくところなし |
この静寂な山容に匹敵するような好ましい場所はないので、決して外には移らない積りだ。
253
自古多少賢 | 盡在青山脚 |
古より多少の賢、 | 盡(尽=ことごと)く青山の脚(ふもと)にあり。 |
注) 「青山」とは墳墓の意味。
思はなむ | 代々のひじりも | 世の塵を | のがれて山に | すみしためしを |
何代も続いている高徳の僧たちも、世の中の煩わしい雑事や俗事から逃れるために、山奥に住んだ先例を、決して忘れはしない(武田智孝氏添削)。
254
有人笑我詩 | 我詩合典雅 |
人有り我詩を笑ふ。 | 我が詩典雅に合(かな)ふ。 |
あはれしる | 人なき世には | 月花の | まことのみちも | かひなかりけり |
花鳥風月を詠んだ美しい詩歌も、もののあわれを知る人のいない世では甲斐無きことである(武田智孝氏訳)。
255
都來六百首 | 一例書巖石 |
都來て六百首。 | 一例して巖石(岩石)に書す。 |
後の世の | 人の為にと | かきのこす | ことばの花は | 千代もにほへり |
後世の人々のためを思い、書き残した美しい言葉、つまり詩歌は、永遠に残るものだ(武田智孝氏添削)。
一口メモ
細川悦子様の色紙、第二弾です。
上記短冊の俳句は件の Facebook「古文書が読みたい!」のメンバーにより、解読頂きました。
詞書 水風忘夏 悦子
し本風尓 | 夏のあ徒左母 | 王數良禮天 | 者やくもあ幾能 | こゝちこ楚数連 |
しほ風に | 夏のあつさも | わすられて | はやくもあきの | こゝちこそすれ |