寒山詩偈讃歌 51
241
我見人轉經 | 依佗言語會 |
我人の經を轉ずるを見るに、 | 佗の言語に依つて會す。 |
こヽろにも | あらで口にて | よむ經は | 功徳もさらに | なしとしらずや |
うわの空で棒読みするお経は、功徳なんぞ一向に得ることはできない、という事を知らないのか。
242
自羨幽居樂 | 長為象外人 |
自ら幽居の樂を羨(ねが)ひ、 | 長く象外の人と為らん。 |
いかにして | 道の外には | 遊ばまし | 心の山の | おくに入らずば |
どうして道を外れた楽しみになど耽っておれようか、瞑想して悟りを得る努力をしなくては!(武田智孝氏訳)。
243
繋之在華堂 | 肴膳極肥好 |
之を繋ぎて華堂(花のように美しい堂)に在(お)けば、 | 肴膳(かうぜん)極めて肥好なれども、 |
注) 「肴」の正字は食扁がつく。「膳」の正字は月扁の代わりに食扁
鹿ならぬ | 人もえじきに | つながれて | 地獄のたねを | まくぞはかなき |
獣が餌を漁るように人間が欲に駆られて富や名誉を追い求め、堕地獄の罪を重ねることの空しさよ(武田智孝氏訳)。
244
花上黄鶯子 | 棺棺聲可怜 |
花上の黄鶯子(鶯の巣立ちの子)、 | 棺棺として聲怜(あわれ)む可し。 |
注) 「棺」の正字は木扁の代わりに口扁
花鳥の | 春もむなしく | 過ぎはてヽ | もみづる秋の | あはれしらずや |
花や鳥たちが活気あふれる春が、はかなくも過ぎ去った後に、草木が色付く秋の、しみじみとした風情を、彼らは知らないのだろうか。
245
當陽擁裘坐 | 閑讀古人詩 |
陽に當つて裘を擁して坐し、 | 閑に古人の詩を讀む。 |
朝日影 | てらす草葉を | しとねにて | よむもたのしき | 古へのふみ |
朝日が照らされている草葉を敷物にして、昔の書物を読むのは、何と楽しいことであろうか。
一口メモ
上記短冊の俳句は件の Facebook「古文書が読みたい!」のメンバーにより、解読頂きました。
右
詞書
知り能世越 | た可みの岡に | 家居して | 故ゝ路やい可に | すみ万左る羅舞 |
ちりの世を | たかみの岡に | 家居して | こころやいかに | すみまさるらむ |
左
詞書 祝 多望津
ふ流里に | 可へ里來末して | あ多らし久 | たてし家居能 | いや左可越こそ |
ふる里に | かへり来まして | あたらしく | たてし家居の | いやさかをこそ |