寒山詩偈讃歌 49
231
元非隱逸士 | 自號山林人 |
元(もと)隱逸の士に非ずして、 | 自ら山林の人と號す。 |
山ふかく | 世はのがれても | かくれえぬ | 心のさるを | いかにしてまし |
山奥深く逃げ込んで来ても、消え去ることのないこの心の煩悩は、どのようにしたものだろうか(武田智孝氏添削)。
232
生而還復死 | 盡變作灰塵 |
生れて還つて復た死す。 | 盡く(ことごとく)變じて灰塵と作る。 |
ありと見し | 人もなき世と | 成ゆくを | しらで迷ふも | おろかならずや |
現世の無情なることを知らずに、思い迷うのは愚なことではないか(武田智孝氏訳)。
233
白雲朝影靜 | 明月夜光浮 |
白雲朝影靜に、 | 明月夜光浮ぶ。 |
あしたには | 雲とおきふす | 山かげの | ゆふべの月の | 影のしづけさ |
雲がかかるほど奥深い山の中で暮らすというような棲家から見る、夕月が何と清(さや)けきことだろうか(武田智孝氏訳)。
234
白日游青山 | 夜歸巖下睡 |
白日には青山に游び、 | 夜は巖下(大きな岩の下)に歸りて睡る。 |
たのしさは | かぎりもあらじ | 明けば出て | くるればかへる | 深山べの庵 |
日が昇れば外出し、暮れればまた帰る、山深い庵の生活の楽しさは、際限がなく続いている。
235
勉尓信余言 | 識取衣中寶 |
勉めよ尓(なんぢ)余(わ)が言を信じ、 | 衣中の寶を識取せよ。 |
注) 「尓(なんじ)」の正字は人偏に人の下に小。
おろかなり | 身にそふ玉を | しらずして | よそにもとむる | 世の中の人 |
自分の身に備わっている宝を知らずに、他にそれを求める世の中の人たちは、何と愚かしいことよ。
一口メモ
上記短冊の俳句は件の Facebook「古文書が読みたい!」のメンバーにより、解読頂きました。
右
詞書 残菊 千秋
さ武介尓毛 | ぬ禮多るいろ可 | 武ら菊の | 香さへ本能可尓 | うちしくれつゝ |
さむけにも | ぬれたるいろか | むら菊の | 香さへほのかに | うちしぐれつゝ |
中
詞書 庭松 正足
海登深起 | 庭乃多可松 | 風不介盤 | 奈ミ奈らぬ波乃 | おと處ひま奈起 |
海と深き | 庭のたか松 | 風ふけば | なミならぬ波の | おとぞひまなき |
左
詞書 多不理
百歳も | や春く可佐年舞 | よ者飛尓者 | なゝそ知母猶 | か數奈ら奴可那 |
百歳も | やすくかさねむ | よはいには | なゝそぢもなお | かずならぬかな |