寒山詩偈讃歌 48
226
國清寺中人 | 盡道寒山癡 |
國清寺中の人、 | 盡く道(い)ふ寒山癡(痴)なりと。 |
知らぬこそ | おろかなりけれ | わらふ人 | わらはるヽ人 | ともになき身と |
笑う人も笑われる人も、共にこの世では明日をも知れぬはかない身であることを知らないのは愚かしいことだ(武田智孝氏添削)。
227
驢屎比麝香 | 苦哉佛陀耶 |
驢屎(ろし=ろばの糞)を麝香(じゃこう=香料の一種)に比す。 | 苦なる哉佛陀耶(=父)。 |
身のために | 佛をおもふ | はかなさは | 鳥や蟲にも | をとりはてけり |
自分の保身のために、仏教を心がけるような、頼りないことは、鳥や虫けらにも劣っている。
228
白雲高岫閑 | 青嶂孤猿嘯 |
白雲高岫(かうしう=山の洞穴)閑にして、 | 青嶂(峯)に孤猿嘯く。 |
しら雲の | たな引く山に | ましらなく | 聲にこヽろの | 玉ぞすみぬる |
白雲が立ち込めている奥山に猿の鳴き声を聞いていると、その声に心の魂が洗われ、裕福な気持ちになる(武田智孝氏添削)。
229
因指見其月 | 月是心樞要 |
指に因つて其の月を見れば、 | 月は是心の樞要(すうよう=最も大切な所) |
大そらの | 月もこヽろの | ひかりぞと | おもひしりなば | うき雲もなし |
大空に浮かんでいる月は、心のなかの光だと思ったならば、心を悩ますような雲は無いに等しい。
230
萬機倶泯迹 | 方識本來人 |
萬機倶に迹に泯(くらま)すも、 | 方に識る本來の人。 |
塵もなき | 水のかゞみに | すむ月の | ひかりぞおのが | あるじなりける |
ちり一つない水面に映し出された月の光こそ自分の主人である。
一口メモ
上記短冊の俳句は件の Facebook「古文書が読みたい!」のメンバーにより、解読頂きました。
右
詞書 杣霖雨 多越里
宮木起る | 斧の音多え天 | 五月雨の | ふ里久らした流 | 丹生乃杣山 |
宮木きる | 斧の音たえて | さみだれの | ふりくらしたる | 丹生の杣山 |
中
詞書 うくひす 真滅
鶯の | そ天能可左須者 | あ左ミ東梨 | 者る能あし多に | おく禮や者丗無 |
鶯の | そでのかざすは | あさみどり | はるのあしたに | おくれやはせむ |
左
詞書 寄露意 多越里
古禮を見よ | 野への千種能 | うえにさへ | 露の安者禮者 | ち里てふ物越 |
これを見よ | 野への千種の | うへにさへ | 露のあはれは | ちりてふ物を |