寒山詩偈讃歌 47
221
老鼠入飯瓮 | 雖飽難出頭 |
老鼠飯瓮(をう=瓶)に入れば、 | 飽くと雖(いえど)も出頭し難し。 |
かぎりなき | 心のよくに | あかずして | 終には身をも | ころすおろかさ |
際限のない私欲に明け暮れて、最後には身を滅ぼしてしまう愚かさよ。
222
自從出家後 | 漸得養生趣 |
家を出でてより後、 | 漸く生を養ふ趣を得たり。 |
家をいでヽ | 山に入らずは | いかにして | ほとけの道を | ふみぞ分くへき |
出家して寺院(比叡山)に入り修行しなければ、どうして仏道に開眼することができようか(武田智孝氏添削)。
223
四時周變易 | 八節急如流 |
四時周りて變易(へんやく=変更)し、 | 八節急にして流るヽが如し。 |
水よりも | はやくながるヽ | 月日ぞと | しらで老ゆく | 身ぞあはれなる |
時の流れは、水の流れよりも早いことを知らずに、老いて行く姿は何とあわれなことよ。
224
伴黨六箇賊 | 劫掠法財珠 |
伴黨六箇の賊、 | 法財の珠を劫掠(ごうりゃく=略奪)す。 |
身にすめる | 五欲の袖を | はらひなば | 世にあるほども | やすく過ぐべし |
人間に潜んでいる色・声・香・味・触の五境に対して起こす情欲を払い去ると、世渡りも安穏に過ごすことができる。
225
茂陵與驪獄 | 今日草茫茫 |
茂陵と驪獄(りがく)と、 | 今日草茫茫たり |
注) 「茂陵」=武漢の稜。「驪獄」=麗戒の山。
忘るなよ | 花のうてなも | こヽろより | 草野の原と | なりしためしを |
花一面の高台も気を緩めると、雑草の生えた野原となってしまった例を決して忘れてはならない(武田智孝氏添削)。
一口メモ
上記短冊の俳句は件の Facebook「古文書が読みたい!」のメンバーにより、解読頂きました。
右
詞書 月前花 多越院
佐きつゝ久 | 花の尓本比に | 可羅ミあひて | 能と可に母るゝ | 於本呂夜ノ月 |
さきつゝく | 花のにほひに | からミあひて | のどかにもるる | おぼろ夜ノ月 |
中
詞書 故郷橘 多越院
本そとのゝ | こゝやのき者乃 | あとなら舞 | 武可し王春禮春 | に本不多知花 |
ほそとのゝ | こゝやのきは(軒端)の | あとならむ | むかしわすれず | にほふたち花 |
左
詞書 花便 多越里
こ能ころ者 | 花の多音美越 | 馬とし亭 | 於きふしま多ぬ | 日も奈可理介梨 |
このころは | 花のたねみ(種実)を | 馬として | おきふし(起伏)またぬ | 日もなかりけり |