寒山詩偈讃歌 43
201
余郷有一宅 | 其宅無正主 |
余が郷に一宅有り、 | 其の宅に正主(しやうしゆ)無し。 |
天地の | 廣き家居に | 主ぞなき | こヽろの玉の | ひかりしらずば |
物事の判断基準が理解できないと、世界中のどんなに広い屋敷に住んだとしても、主にはなれない。
202
伸頭臨白刃 | 癡心為綠珠 |
頭を伸べて白刃に臨み、 | 癡心綠珠が為なり。 |
注) 「癡心」はおろかな心。「綠珠」は石崇の妓女。
たぐひなき | 家居も何か | たのむべき | まよふ心の | 雲しはれずば |
心に濁りや曇りがあったら、どんな立派な御殿のような家だって、何の頼りになるものか(武田智孝氏訳)。
203
那堪數十年 | 新舊凋落盡 |
那(なん)ぞ堪へん數十年。 | 新舊凋落し盡(ことごと)く。 |
たのみつる | 人皆消えて | のこる身の | はかなさ知らぬ | あはれ世の中 |
頼みにしていた人達が皆いなくなってしまって、独りとり残された自分、その自分もまたいつか消えて行くはかないない身であるのに、それに気づかぬ人達が多いこの世の中は哀れである(武田智孝氏訳)。
204
皎然易解事 | 作麼無精神 |
皎然として解し易き事、 | 作麼(なんぞ)精神無からんや。 |
をしみなく | 人にめぐまば | つひにまた | おのれにかへる | ものとこそしれ |
惜しむことなく、他人に恵みを施せば、最後には自分に帰ってくるものと知りなさい。
205
水流如急箭 | 人世若浮萍 |
水は流れて急箭の如く、 | 人世は浮萍(ふへう)の若(ごと)し。 |
かりの世 | は夢としりなば | 煩悩の | 火に身をやける | 人もあらじを |
無常なこの世は夢だと悟れば、煩悩に煩わされる人もいないだろうに。
一口メモ
上記短冊の俳句は件の Facebook「古文書が読みたい!」のメンバーにより、解読頂きました。
右
詞書 寄雪祝 廣川
七十路の | 身尓宇起事も | 志良雪乃 | 徒毛里て久流ゝ | 年の由太介左 |
ななそじの | 身にうき事も | しら雪の | つもりてくるゝ | 年のゆたけさ |
左
詞書 草庵雪 廣川
多ゝひとり | 見る堂尓をしき | 奈可め可那 | 草の庵尓 | 川毛るし良ゆき |
たゝひとり | 見るだにをしき | ながめかな | くさのいほりに | つもるしらゆき |