寒山詩偈讃歌 40

和歌短冊 その2
熊本大学附属図書館所蔵 高見家文書 #4006

186

莫曉石橋路縁此生悲歎
石橋(しゃくけう)の路を曉(さとる)莫し。此に縁つて悲歎を生じ、

注) 石橋=天台赤城山上高きこと一万八千丈の上にあり、広さ尺に満たず。

雄こヽろを振おこさずばいかにしてあやうきはしをわたりはつべき

猛々しい心を振い起さないければ、どうやって危ない橋を渡り尽くせるのだろうか。

187

何曾見好人豈聞長者語
何ぞ曾(かつ)て好人を見ん。豈(あ)に(=どうして)長者の語を聞かんや。
よき人を師としもとめてつかへずばいかでまことの道をしらまし

能力のある人物を師匠として、自らの支えとしなければ、どうして正しい道を理解できようか。

188

死生元有命富貴本由天
死生元(もと)命有り、富貴本天に由る。
いき死も富みまづしきもおのづから身に得るものと知る人ぞなき

人は生まれて死んだり、裕福になったり貧しくなったりするのは、その人が原因であることを知っている人はいない。

189

地厚樹扶疎地薄樹憔悴
地厚うして樹扶疎(ふそ)たり。地薄うして樹憔悴(しょうすい=痩せ衰える)す。
何事もこのことわりに外ならずくさ木も人もかはらざりけり

すべてはこの道理に他ならない。(その点に関しては)自然の草木も人間も、違いは無い(武田智孝氏添削)。

190

面上兩惡鳥心中三毒蛇
面上兩惡の鳥。心中三毒の蛇。
おそろしや人に生れてむねの中はつねに毒蛇のすみかとおもへば

人に生まれてきたために、胸の中には、いつも毒蛇が住み着いていると思うと、何と恐ろしいことであろうか。

一口メモ

上記短冊2句は、いずれも祖厚禅師の和歌ですが、件の「古文書が読みたい!」のメンバーの皆様に解読頂きました。

遠し三天母止萬良奴花能色三禮盤知るも前行風そつれ奈き
をしみてもとまらぬ花の色みればちるも前行風ぞつれなき

能こりつゝさきつる菊の色あせて久禮行秋乃庭そさ飛しき
のこりつゝさきつる菊の色あせてくれ行秋の庭ぞさびしき

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