寒山詩偈讃歌 39
181
心中無一事 | 萬境不能轉 |
心中一事無ければ、 | 萬境轉ずること能はず。 |
こころだに | しづかなりせば | 住むまヽに | 山路も里も | 何か分くべき |
せめて心だけでも落ち着いていれば、山越えの道であろうと山里であろうと、どこに住んでも、区別をする必要はない。
182
廻心即是佛 | 莫向外頭看 |
廻心(ゑしん=心を改め正しい道にはいる)即ち是れ佛。 | 外頭(げとう)に向つて看ること莫れ(なかれ=してはいけない)。 |
ながむべき | 花はこヽろの | 中にあるを | とほくもとめて | めづるはかなさ |
眺めるべき花は自分の心の中にあるのに、わざわざ遠くまで出掛けて褒めるのは、むなしいことだ。
183
可畏輪廻苦 | 往復似翻塵 |
畏る可し輪廻(りんね)の苦、 | 往復翻塵(ほんじん=揺れ動く埃)に似たり。 |
日につくる | 報はおのが | 身より出て | 又かへりくる | ものとしらずや |
毎日、報いとして身に受けているものは、自分の身から出て、また我が身に返ってきたものである。そういう理(ことわり)を心得ておくように(武田智孝氏訳)。
184
爭似識眞源 | 一得即永得 |
爭(いかで)か似ん眞源を識つて、 | 一得即ち永得ならんには。 |
みがきえし | こヽろの玉の | 影こそは | ながくくもらぬ | 光なりけり |
磨き上げて得た心の宝石の輝きこそは、永遠に曇らない光である。
185
眞佛不肯認 | 置力枉受困 |
眞佛を肯て認めず。 | 力を置きて枉(=曲)げて困を受く。 |
むねにある | おのがこヽろの | 佛をば | よそにもとめて | 何かくるしむ |
自分の胸中にある佛をないがしろにして、他に佛を求めて苦しむのはどういう事であろうか。
一口メモ
上記短冊3句は、いずれも祖厚禅師の和歌ですが、件の「古文書が読みたい!」のメンバーの皆様に解読頂きました。
右歌 春雨晴 廣川
能と可にも | 晴し雨可奈 | 立奈飛く | 霞乎曽良能 | う起雲尓し天 |
のどかにも | 晴れし雨かな | 立なひく(立ち並んで) | 霞をそらの | うき雲にして |
中歌 祝言 七十三翁 廣川
多飛良介き | としの於者里尓 | とふ田鶴の | 知起るよ者ひや | 久し可らまし |
たひらけき | としのおはりに | とふ田鶴の | ちきるよはひや | 久しからまし |
左歌 奉祝 廣川
天照須 | 御稜威かしこみ | 青島乃 | あ多も末津ろふ | 今日のう連しさ |
天照す | 御稜威かしこみ | 青島の | あたもまつろふ | 今日のうれしさ |
注)「御稜威かしこみ」の「御稜」は、「御陵」(=天照皇大神の陵所・青島神社)の書き違いと思われます。