寒山詩偈讃歌 37
171
君身招罪累 | 妻子成快活 |
君が身罪累を招き、 | 妻子快活を成す。 |
身につもる | 罪をもしらで | 魚鳥の | にくにあきつヽ | たのしとぞする |
自分の身に積もり積もった罪に気づかずに、魚や鳥の肉を食べ飽きるまで堪能しながら、それを楽しいと思っている者もいる。
172
言既有枝葉 | 心懷便險被 |
言既に枝葉有るは、 | 心懷便(すなわ)ち險被(けんぴ)なればなり。 |
注) 「心懷」=心に思う事。「被」の正字は「言扁に皮」。
本根の | みちをまもらば | 大かたの | 草木の枝を | 何かいふべき |
根本の道理(正しい生き方)を間違えなければ、おおかたの枝葉の部分についてはそんなに気にすることはない(武田智孝氏訳)。
173
二瓶任君看 | 那個瓶牢實 |
二瓶君が看るに任す。 | 那個の瓶か牢實なる。 |
注) 「瓶」の正字は「缶+并」。「那個」=何れの。
世の中の | うそとまことの | 二みちは | ふみえて來つる | 人やしるらむ |
世の中の真実と偽りの二つの道理は、その場に身を置いて初めて気が付くものだ。
174
門外有三車 | 迎之不肯出 |
門外に三車有, | 之を迎ふれども肯(うけがへ)て出ず。 |
門の外に | 車しなくば | 終ふる身を | けぶりとなして | 消えましものを |
御仏の有難い教え(お経)がなければ、火宅(火事の家)のような世俗を越えたところの浅ましいこの世で、焼け死んで煙となって消えるだけの身であったろうに(武田智孝氏訳)。
175
有身與無身 | 是我復非我 |
有身か無身か。 | 是れ我か復た我に非ざるか。 |
ある身ぞと | おもへばむなし | 我ながら | われをわするヽ | 心たのしも |
己に捉われ過ぎることは空しい、邪念を捨て無心無我の境地に至れば楽しいですよ(武田智孝氏訳)。
一口メモ
上記画像は、祖厚禅師筆による歌ですが、件の「古文書が読みたい!」グル-プの皆様によって下記のように解読頂きました。
奈数事も | な幾面可介乎 | うつし毛天 | 可ひ奈き身尓者 | やさし可里計李 |
なす事も | なき面かげを | うつしもて | かひなきみには | やさしかりけり |
明治四十年丁末夏日尓天寿帰