寒山詩偈讃歌 33
151
任价千聖現 | 我有天真佛 |
任价(さもあらばあれ)千聖現るヽとも、 | 我に天真佛有り。 |
注) 「价」の正字は、旁の二本の縦棒が「小」。
さもあらば | あれ世の佛の | さまざまも | こころひとつの | ほかにやはある |
ともかくこの世の中に仏が数多おられようと、(真の仏は)自分の心の中にのみおわすのだ(武田智孝氏訳)。
152
不要求佛果 | 識取心王主 |
要(かなら)ずしも佛果を求めざれ。 | 心王の主を識取せよ。 |
おのが持つ | こヽろのあるじ | 有としらば | 仏果もほかに | もとめざらまし |
自分には心の主があると知ったならば、仏道修行の成仏という結果も、他に求める様なことは、しなかっただろうに。
153
勁挺鐵石心 | 直取菩提路 |
勁く(強く)鐵石心を挺(ぬき)んでて、 | 直ちに菩提の路を取れ。 |
こヽろだに | たゆまざりせば | 分けのぼる | 菩提のみちも | 何かまよはむ |
心さえ倦まず弛まず、修行の道を進んでゆけば、菩提への道も、決して迷うことはないだろう(武田智孝氏添削)。
154
寒巖人不到 | 白雲常靉靆 |
寒巖人到らず、 | 白雲常に靉靆(あいたい=雲や霞がたなびいている)。 |
千萬の | 年もかはらじ | しらくものた | なびく山の | 高きすがたは |
白雲がたなびく高山の雄姿は、幾千万の年が経過しても、変わることはないであろう。
155
獨歩石可履 | 孤吟籐好攀 |
獨歩して石履む可し。 | 孤吟して籐攀(よづ)るに好し。 |
いはがねに | かヽる藤浪 | 袖ふれて | 手折るもたのし | 獨りめでつヽ |
岩の根に垂れかかる藤の花房に袖が触れて、その花房の美しさに感動しながら、折りとって持つのも楽しいものだ。
一口メモ
上記画像は、今回も Facebook「古文書が読みたい!」の、メンバーの方々のご協力を得て、下記の通り解読できました。
廣川筆
生いてし | 朝日乃山能 | 若ま徒の | 左可え舞千代の | 末そま堂流ゝ |
おひいてし | あさひのやまの | わかまつの | さかえむちよの | すえぞまたるる |
朝日がよく映える山に、若い松が芽生え、すくすく成長しているが、千年の後に大きく成長する姿が待ち遠しい。