寒山詩偈讃歌 32
146
采藥空求仙 | 根苗亂挑掘 |
藥を采つて空しく仙を求め、 | 根苗亂りに挑掘(てうくつ=掘り起こす)すれども、 |
いくヽすり | 何かもとめむ | こヽろだに | まことのみちに | そむかざりせば |
せめて心さえ、真の道に背かなければ、新興宗教や似非道徳の教えなどの色々な薬をどうして求める必要があろうか(武田智孝氏訳)。
147
失却斑猫兒 | 老鼠圍飯甕 |
斑猫兒を失却して、 | 老鼠飯甕(はんをう=茶碗)を圍(囲)む。 |
かひなしや | まことたゆなば | 猫もまた | こヽろのねずみ | 身をやくらはむ |
真の道を失ってしまうと、猫でも心に巣くう邪心によって食い殺されてしまうだろう。悲しい事よ、人間が真の道を見失ってしまうと、身内に巣くう邪心によって、食い殺されてしまうぞ(武田智孝氏訳)。
148
憶昔少年時 | 求神願成長 |
憶ふ昔少年の時、 | 神に求めて成長せんことを願ひしに、 |
あはれたゞ | 親のまことを | ながめつヽ | くもりなき世の | 色をみるかな |
親の言動を眺めながら、善良な世の中を思い描くのは、何と愛おしいことか。
149
身著空花衣 | 足躡龜毛履 |
身には空花(くうげ)の衣を著け、足には龜毛の履(くつ)を躡(ふ)む。 | 足には龜毛の履(くつ)を躡(ふ)む。 |
大空の | 月と星とを | ながめつヽ | くもりなき世の | 色をみるかな |
大空にまたたく月と星を眺めながら、美しい世の中の景色を想像してみよう。
150
可貴天然物 | 獨一無伴侶 |
貴ぶ可し天然の物、 | 獨一にして伴侶無し。 |
われにとひ | われにこたへて | 知りぬへし | たぐひもあらぬ | おのがほとけを |
自分に問いかけ、自分に答えて、他にはない自分だけの大事な仏を、充分に理解しなければならない。
一口メモ
上記掛軸には、和歌がよまれています。雅号は「廣川」となっていますが、これは祖厚禅師が和歌を詠むときに用いていたようです。漢詩や水墨画用として別に「林泉」の号が使われています。画像の解像度が低いためか解読に困難を極めています。件の「古文書が読みたい!」のメンバーの方々に解読頂きました。
人め佐け | 可禮ぬる庭に | さ幾いてて | 春を見せ多る | うめの者都者那 |
ひとめさけ | かれぬる庭に | さきいでて | 春を見せたる | うめのはつはな |
人々から見放された手入れがされていないわびしい庭に、梅の花が咲き出して、いっぺんに春らしい美しい姿見せてくれた。