寒山詩偈讃歌 25
111
慳惜不救乏 | 財多為累愚 |
慳惜(けんじゃく=惜しむ)にして乏しきを救はず、 | 財多くして累愚を為す。 |
金もちて | をしむこヽろは | おのが愚を | 人にしらする | たねとしらずや |
財産をためて、出し惜しみをするのは、自分の愚かさを他人に暴露する事だと知らないのか。
112
巴歌唱者多 | 白雪無人和 |
巴歌(=俗歌)は唱ふるもの多く、 | 白雪(=琴曲の名)は人の和する無し。 |
大方に | 高きしらべは | よそにして | きく人もなき | 世ぞあはれなる |
一般的に、高尚な音楽は回避されて、耳を傾ける人もいなくなってしまう、この世の中は悲しいことだ。
113
少婦嫁少夫 | 兩兩相憐態 |
少婦少夫に嫁げば、 | 兩兩相憐態す。 |
おもへ人 | たゞなにごとも | よの中は | そのほど/\に | なすぞよろしき |
皆に聞いて欲しいことだが、世の中は何事についても、めいめい身の程に応じてすることが肝要だ(武田智孝氏添削)。
114
未能得官職 | 不解秉耒耜 |
未だ官職を得ること能はず。 | 耒耜(らいし)を秉(と)ることを解せず。 |
おのがえし | ざえをたのみて | 終に身も | 世にすてらるヽ | その人あはれ |
自分が身に付けた才能を、頼りに暮らしてきたのに、終末を迎えると相手にされなくなるような人は気の毒だ。
115
旭日銜青嶂 | 晴雲洗緑潭 |
旭日青嶂を銜(ふく)み、 | 晴雲緑潭を洗ふ。 |
いづる日の | かげもにほいて | 山川の | みどりの苔を | あらふすゞしさ |
日が昇り、光も見られるようになり、山川の青々とした苔に差し込むその光は、何と涼しげなことだろう(武田智孝氏添削)。
一口メモ
上記画像の漢詩について、書き下し文を勝手に作成してみましたが、自信がありません。不適切な箇所があればご指摘下さい。
雨何無頼不駆暑 | 雲似有心偏戀山 |
雨は何ぞ頼みにするところのなく、暑さを追い払わず、 | 雲は思慮深い心に似て、恋の山に偏(かたよ)る |