寒山詩偈讃歌 19
081
何須殺佗命 | 將來活汝己 |
何ぞ須 (もち)ひん佗の命を殺すことを、 | 將(も)ち來つて汝を活かすのみ。 |
魚鳥の | 肉をくらひて | おのが身の | つゞかなかれと | 思ふおろかさ |
殺生をしてばかりして、自分の体が健康であれ、と願うほど愚かしいことはない(武田智孝氏訳)。
082
棄金卻擔草 | 謾佗亦自謾 |
金を棄てて卻(かへ)つて草を擔(=担、にな)う。 | 佗を謾し亦た自ら謾す。 |
えぬ玉を | 得たりといひて | 世の人を | たばかるつみは | のがるべしやは |
持ってもいない財宝を、あたかも持っているように、世の中の人々をだます罪は、逃れることができようか。
083
佛説元平等 | 總有眞如性 |
佛説は元平等、 | 總て眞如の性(しゆう)有り。 |
人のみか | この世に生る | 草木まで | おなじほとけの | 光なりけり |
人間だけでなく、この世界に生きている草木までも皆、同じ仏様による栄光をうけている。
084
護即弊成好 | 毀即是成非 |
護すれば即ち弊も好と成り、 | 毀(き=こわす)すれば即ち是も非と成る。 |
よしあしの | 人のことばは | たのまれず | おのが心に | とはゞ知らまし |
事の善悪について、他人のいう事は当てにせず、自分の心に聞けば、自ずから判断できるであろうに(武田智孝氏添削)。
085
閑居好作詩 | 札札用心力 |
閑居して詩を作ることを好み、 | 札札(あつあつ)として心力を用ふ。 |
身にもてる | こヽろの玉の | くもりなば | ふみよむわざも | かひやなからむ |
自分の身に付けている、美しく清らかな心に陰りができれば、読書をしても無駄なことになるであろう。