寒山詩偈讃歌 18
076
瞋是心中火 | 能燒功德林 |
瞋(しん)は是れ心中の火、 | 能(よ)く功德林を燒く。 |
しのべたゞ | いかる心の | 火をもちて | 身をやく人を | あはれとおもはゞ |
怒り叫ぶ心が自分を見失ってしまう、ということが情けないことだと思えば、ただ我慢をしなさい。
077
人間八百歳 | 未抵半宵長 |
人間八百歳、 | 未だ半宵の長きにも抵(あたら)ず。 |
此の世にて | 長き命も | さきの世は | よひのねむりの | さむる間もなし |
現世で長かった命も、来世では夜の眠りが覚める時間にも満たない。
078
不求當來善 | 唯知造惡因 |
當來の善を求めず、 | 唯だ造惡の因を知る。 |
つくりおく | 罪のふかさを | おもはずて | などよきことを | よそになすらむ |
積み重なって行く自分の罪の深さを考えずに、何故、善行を他所でしようとするのであろうか。いや、自分の積み重ねた罪の深さを十分思い知った上で、罪滅ぼしをしているんですよ(武田智孝氏添削)。
079
渠若向西行 | 我便東邊走 |
渠若し西に向つて行かば、 | 我は便ち東邊に走らん。 |
大方に | そむき/\て | なすわざの | あしきをしれる | 人ぞすくなき |
世間一般の人々に対して、反対ばかりする行為は、悪いことだと知っている人は少ない。
080
努膊覓錢財 | 切齒驅奴馬 |
膊(かた)を努(いから)して錢財を覓(もと)め、 | 切齒して奴馬を驅(かけ)る。 |
夢の間の | 命としらで | たからのみ | あつむる人の | 身ぞあはれなる |
自分の命は、ほんの一瞬であることを知らずに、蓄財ばかりをする人は、何と哀れなことだろう。