光尚君御家譜抜書 40
御帰ニ松野右京宅ニ御出ト云々いつ連も実事奈るや
又古老茶話曰予か父十二才ゟ 光尚君御近習ニ有之
阿部兄弟ニ討手を被遣候その日者松野右京宅江御成也
御供ニ茂行堂り未明ニ御供中御玄関前ニ揃有之時分
阿部屋敷討手之面々押寄堂りと聞え帝時の聲と
覚え帝大勢の聲御殿ニ聞え堂り 光尚君御意ニも
仕手之者共可只今散り堂るハとの御言葉を御側ニ而
くずし字解読
いつ連も実事奈るや(いづれも、じじつなるや)。云々とあるが、これらは事実であろうか。
又古老茶話曰予か父十二才ゟ(また、ころう、さわいわく、よがちち、じゅうにさいより)。また、古老の茶話で言うことには、自分の父は12歳から。
その日者松野右京宅江御成也(そのひは、まつのうきょうたくえ、おなりなり)。その日は松野右京の屋敷に行かれて。
御供中御玄関前ニ揃有之時分(おともじゅう、おげんかんまえに、そろえありのじぶん)。お供の連中が玄関前に揃っているときに。
討手之面々押寄堂りと聞え帝(うってのめんめん、おしよせたりと、きこえて)。討手の連中が押し寄せてきたと聞いて。
覚え帝大勢の聲御殿ニ聞え堂り(おぼえて、おおぜいのこえ、おとのに、きこえたり)。(ときの声)のように思えて、大勢の人々の声がお殿様の耳に届いた。
仕手之者共可只今散り堂るハ(しての、ものどもが、ただいま、ちりたるは)。取り巻きの人達が、ちょうど今解散したようだと。