光尚君御家譜抜書 33
七之允ハその満々鑓を捨帝立退候<一ニ又七郎を捨帝外ニ働ク>余人ニ討連
希る可腹を切希る尓や一族一同ニ滅亡い多し候又七郎ハ
鑓をか奈ぐり捨希連ども深手奈連ハ歩行難叶打伏世
居堂るを誰とハ不知<考ニ高見権右衛門可>又七郎手負堂るや天晴見事之
働支也者や退連よと申候得ハ又七郎聞帝云ク甲斐奈き
事可奈引程之足阿連ハ先ニ進ムト申希ると也其時
譜代之家来走り来り肩ニ加希帰り候
くずし字解読
七之允ハその満々鑓を捨帝立退候(しちのすけは、そのまま、やりをすてて、たちのきそうろう)。七之允はそのまま槍を捨ててその場を去った。
一族一同ニ滅亡い多し候(いちぞく、いちどうに、めつぼう、いたしそうろう)。一族はこぞって滅亡してしまった。
深手奈連ハ歩行難叶打伏世(ふかで、なれば、ほこう、なんきょう、うちふせ)。深手を負ったので歩行は難しく伏せて。
又七郎手負堂るや天晴見事之(またしちろう、ておい、たるや、あっぱれ、みごと、これ)。又七郎は負傷したものの素晴らしく見事な(働きであった)。
働支也者や退連よと申候得ハ(はたらきなり、はや、のかれよ、と、もうしそうらえば)。働きである。急いで後ろにのいて下さいと、言ったところ。
大きな「し」に点が加わって、「申し候」という頻出する合字です。
引程之足阿連ハ先ニ進ムト申希ると也(ひくほどの、あし、あれば、さきにすすむと、もうしける、と、なり)。引き下がる程の脚力が残っているのであれば、前に進むと言ったそうな。
譜代之家来走り来り肩ニ加希帰り候(ふだいの、けらい、はしりきたり、かたにかけ、かえりそうろう)。代々継いできた家来が走ってきて、肩に担いで帰って行った。