光尚君御家譜抜書 32
阿部弥五兵衛下知を奈して臺所之前に有又七郎言葉を
可希弥五兵衛日頃手練之鑓を見堂し我等見置シ越
見る歟ト云希連ハ弥吾兵衛云ニや及ふト答互ニ恥し免帝
突合ニ又七郎可鑓胸板ニ當り候得ハ弥吾兵衛鑓を捨引退候を
臆病也楚こを引奈と又七郎聲を掛希連ハ逃ハ世ぬそ
腹を切と言捨帝内ニ入る其時弟七之允又七郎ニ渡合
暫く鑓合ニ又七郎高股を志たた可ニ突連働奈らす
くずし字解読
下知を奈して臺所之前に有(げちを、なして、だいどころの、まえにあり)。指図をして台所の前におり。
鑓を見堂し我等見置シ越(やりを、みたし、われら、みすえしを)。槍を見たいものだ、私がじっと見つめるのを。
云ニや及ふト答互ニ恥し免帝(いうには、およぶと、こたえ、たがいに、はじ、しめて)。承知したと答え、お互いに欠点を補って。
突合ニ又七郎可鑓胸板ニ當り候得ハ(つきあうに、またしちろうが、やり、むないたに、あたりそうらえば)。突き合っているうちに、又七郎の槍が胸板に当たったので。
又七郎聲を掛希連ハ逃ハ世ぬそ(またしちろう、こえを、かければ、にげはせぬぞ)。又七郎が声をかけると、逃げるのではない。
腹を切と言捨帝内ニ入る(はらを、きると、いいすてて、うちに、いる)。自害すると言い放って家の中に入る。
高股を志たた可ニ突連働奈らす(たかももを、したたかに、つかれ、はたらきならず)。足のももの上部を激しく突かれ、働くことができなかった。