光尚君御家譜抜書 31
押入るニ敵待まふ希帝突掛る権右衛門す可左壽鑓を合る尓
敵の鑓者やくし帝腹ニ當候得共懐中鏡ニ<此鏡今ニ傳来鼻紙ハ末家ニ伝え候>
と満り候其内ニ相手を仕留メ仕候散々ニ入乱レ切結ひ
家ニ火を掛ケ帝相働く是ゟ先隣屋敷之塚本(栖本の誤り)
又七郎ハ阿部屋敷ニ討手之面々押入る音トを聞ト飛としく
堺能垣を踏ミ破川て年来手訓堂る大身の鑓を
提ケ案内知り堂る事奈連ハ兄弟之者を尋累尓
くずし字解読
権右衛門す可左壽鑓を合る尓(ごんうえもん、すかさず、やりを、あわせるに)。権右衛門は直ちに槍を合わせると。
腹ニ當候得共懐中鏡ニ<此鏡今ニ傳来鼻紙ハ末家ニ伝え候>(はらに、あたりそうらえども、かいちゅう、かがみに、<このかがみ、いまに、でんらい、はながみは、ばっけに、つたえそうろう)。腹に当たったけれども、懐中に入れていた鏡に<この鏡は現在まで伝来して、鼻紙は分家に伝えられている>)。
と満り候其内ニ相手を仕留メ(とまり、そうろう、そのうちに、あいてを、しとめ)。(鏡に)当たって止まった。その間に相手を仕留めて。
家ニ火を掛ケ帝相働く(いえに、ひをかけて、あいはたらく)。阿部の屋敷に火を放って働いた。
討手之面々押入る音トを聞ト飛としく(うっての、めんめん、おしいる、おとを、きくと、ひとしく)。討っての人々が押し入って来る気配を知ると、一様に(境の垣根)。
堺能垣を踏ミ破川て(さかいの、かきを、ふみやぶって)。境界の垣根を踏み壊して。
提ケ案内知り堂る事奈連ハ(さげ、あんない、しりたる、ことなれば)。(大身の鑓を)引っさげて、事情を知っていることであれば。