光尚君御家譜抜書 21
其頃御家中ニ而者十太夫と云名左へも嫌ひ候と也かヽる臆
病成ル十太夫を以竹内数馬ニ討手之役を倶ニ被 仰付堂る
我等分十太夫同前之臆病者と被 思召候事口惜と云て
途中ニ而着込ミをゑ里より引出し討死尓極メ候此事
被 聞召首尾好仕廻討死不仕様ニと御使者度々被下
候得共只畏々と計り御請度毎ニ申上候登云々古老
茶話ニ曰数馬兄竹内八郎兵衛<一ニ八兵衛>と云者ハ仕手ニハ不有し天
くずし字解読
十太夫と云名左へも嫌ひ候と也(じゅうだゆう、と、いうなさへも、きらひ、そうろうとなり)。十太夫と言う名前さえも嫌ったということである。
討手之役を倶ニ被 仰付堂る(うっての、やくを、ともに、おおせつけられたる)。討手の役割を一緒に命じられたのは。
被 思召候事口惜と云て(おぼしめさるそうろうこと、くちおし、といいて)。
着込ミをゑ里より引出し(きこみを、えりより、ひきだし)。上着の下の防具を襟から引き出して。
首尾好仕廻討死不仕様ニと(しゅびよく、しまい、うちじに、つかまつらぬ、ようにと)。首尾良く片を付けて、討ち死しないように。
候得共只畏々と計り(そうらえども、ただ、いいと、はかり)。そうだろうけれども、ただ恐れ多いと推し量り。
と云者ハ仕手ニハ不有し天(と、いふものは、してには、あらずして)。という人は(討手の)やり手ではないのだが。