光尚君御家譜抜書 20
畑十太夫ハ天岸樣御肝煎<天岸樣御幼年也御肝煎ト在事い不可し>尓て被 召抱候
兼而臆病者とハ被 聞召候得共恰合万端宜敷もの故
い川そハ剛成る事もあらん可と被 思召候処今度之仰を
承り候時新免武蔵手柄を仕やれと云て背中を
打候得バはや腰可ぬ希候よし扨小便壽連ハ討死世ぬもの迚
小便い多し候と也山崎喰違丁ニ屋敷有之候得共阿部討
果候砌者我家も分らすう路津支候と也依之御暇被下
くずし字解読
天岸樣御肝煎<天岸樣御幼年也御肝煎ト在事い不可し>(てんぎしさま、おん、きもいり、<てんぎしさま、ごようねんなり、おん、きもいり、とあること、いぶかし>)。 肝煎=世話役。いぶかし=訝し(疑わしい)
恰合万端宜敷もの故(かっこう、ばんたん、よろしき、ものゆえ)。 恰合=きっちり。ばんたん=あらゆる手段。準備万端。
い川そハ剛成る事もあらん可と(いつそは、ごう、なることも、あらんかと)。いつそ =反対に。
手柄を仕や連と云て背中を(てがらを、しやれと、いうて、せなかを)。 手柄をあげてよと言って背中を。
扨小便壽連ハ討死世ぬもの迚(さて、しょうべん、すれば、うちじにを、せぬとて)。
山崎喰違丁ニ屋敷有之候得共(やまざき、くひちがい、ちょうに、やしき、これあり、そうらえども)。
我家も分らすう路津支候と也(わがやも、わからず、うろつき、そうろう、と、なり)。自分の家もわからず、うろつき回ったとのことである。