光尚君御家譜抜書 13

熊本大学附属図書館所蔵 高見家文書 #3008

聲をあららけなましひニ先に進ミ足手まとひ也とて

取て押除ケ進ミ入る所を左右より一同ニ鑓付る然共本望

討死と覚悟の上ハ少もひるます死を遂る<一ニ鉄炮ニ中て死す>嶋徳右衛門も

痛手をいとわす一所ニ倒れて討死致し候添島九兵衛ハ

本組頭之先途を見届ヶ候と名乗て斬死しその外野村

庄兵衛を初メ数馬か家来ニ至迄思ひ〃に働き候と也

  考ニ野村庄兵衛ハ阿部事ニ付て御追放ト一書ニ有然ハ

  働たるハ虚説か外ニ事納有哉重て可考

くずし字解読

聲を阿らら希奈満しひニ( こえを、あららげ、なましひに)。いっその事、声を荒々しくあげてしまおうと。阿(あ)、希(け)、奈(な)、満(ま)。

取帝押除ケ進ミ入る(とりて、 おし、のぞけ、すすみ、いる)。手でうまく交わして、押しのけて進んで入って行くと。

少茂ひる満す死を遂る( すこしも、ひるまず、死を、とげる)。何のためらいもなく、死を遂げてしまった。茂(も)、満(ま)。

痛手をいと王す一所ニ倒連帝(いたでを、いとわず、ひとところに、たおれて)。傷を負ったのを少しも気にせず、一カ所に倒れて。(わ)、連(れん)、帝(て)。

本組頭之先途を見届ヶ候と( ほん、くみがしらの、せんどを、みとどけ、そうろうと)。この表門の組頭(竹内数馬)の死を見届けたりと(名乗りをあげて)。

庄兵衛を初メ数馬か家来ニ至迄( しょうべえを、はじめ、かずまが、けらいに、いたるまで)。庄兵衛を初めとして、数馬の家来に至るまで。

阿部事ニ付て御追放ト一書ニ有然ハ( あべ、ごとに、ついて、おついほうと、ひとがき、にあり、しからば)。阿部事件について、御追放とだけ書いてあり、そうであれば。

働堂るハ虚説可外ニ事納有哉(はたらき、たるは、きょせつか、ほかに、こと、おさめ、ありや)。働いたのは、偽りの話なのか、他に納得させるような事があるのか(十分に検討すべきである)。

堂(た)、可(か)、哉(や)。「哉」は、文末について、疑問の意味を示します。ここでは、反語として問いかけています。

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