光尚君御家譜抜書 12
一人も見衣春数馬下知して玄関長屋臺所其外
屋敷内ニ人数を配帝自身ハ臺所之内ニ走り入帝
見連ハ鎖ノ口本そ免ニ引立置春堂るを押明て進ミ入る
竹内が譜代の乙名嶋徳右衛門<一ニ左衛門>立隔帝殿ハ今日の
惣大将也麁忽之御振舞不可然私御先仕候と云天
鎖口を入連ハ敵待受志たゝ可尓突鑓脇ニ當り帝
深手な連ハよろよろとして数馬ニ倒連かからんとするを数馬
くずし字解読
一人も見衣春 (ひとりも、みえず)。一人もいなくて。 衣(え)、春(す)
臺所之内ニ走り入帝 (だいどころ、の、うちに、はしり、いりて)。台所の 内部に走り、入って。 帝 (て)
見連ハ鎖ノ口本そ免ニ (みれば、かぎのくち、ほそめに)。見ると、鍵の間(重要な武具を入れておく部屋)の入口が細めに。本(ほ),免(め)いずれも変体仮名。
竹内が譜代の乙名(たけうちが、ふだいの、おとな)。竹内の家系を継いでいる惣(そう=農村の自治組織)を指導した有力な名主(みょうしゅ)。
惣大将也麁忽之御振舞 (そうだいしょう、なり、そこつの、おん、ふるまい)。総大将であり、粗忽な振る舞いは。
敵待受志たゝ可尓(てき、まちうけ、したたかに)。敵が待ち受けて、甚だしく。多(た)、可(か)、尓(に)
突鑓脇ニ當り帝(とつ、やり、わきに。あたりて)。突然槍が脇腹に当たって。
深手な連ハよろよろとして (ふかで、なれば、よろよろ、として。
数馬ニ倒連かからんとするを(かずまに、たおれ、かからん、と、するを)。数馬に倒れかけてきたのを。