光尚君御家譜抜書 7
御火葬之節妻子春日村ニ至り髪を雉火中ニ投ケ込ミ
刀を抜んとし希るを 刀をハ奪ひ取申候
依之存念を達世さる事を含ミ只今之妙解寺脇乃
川を渡り三丁目御門脇ゟ山崎へ至り候よし是は
人尓とらへらる遍し起との存念のよし扨自分屋敷ニ
帰り一類中申談取以籠り候ト云候
一 弥一衛門跡式嫡子権兵衛ニ被為拝領自分之知行三百石者
被 召上候罷処寛永二十年二月
妙解院様三回御法事之節於御寺不届之仕方有之
討首被 仰付候弟共権兵衛屋敷江取以籠り候ニ付依被 仰付
同月二十一日討果ト云々考ニいつ連もいふ可し
此趣粗 御聴尓達御諚ニよりて外聞横目之面々
くずし字解読
髪を雉(薙の誤字)火中ニ投ケ込ミ(かみを、なぎ、かちゅうに、なげこみ)。髪を勢いよく横に切り払って火中に投げ込み。
刀を抜んとし希るを(かたなを、ぬかんと、しけるを)。刀を抜こうとしているのを。希(け)は、頻繁に出てくる変体仮名です。
依之存念を達世さる事を含ミ只今之妙解寺脇乃(これより、ぞんねんを、たっせざる、ことを、ふくみ、ただいま、これ、みょうげじ、わきの)。この事で心に思っていた考えを達成できないことを悟り、それからすぐに妙解寺の側に(流れている坪井川を渡り)。
脇ゟ山崎へ至り候よし是は(わきより、やまざきへ、いたり、そうろう、よし、これは)。(三丁目御門)のすぐそばから、山崎に入って行ったとのことで、これは。
人尓とらへらる遍し起との(ひとに、とらへらる、べしきとの、ため)。誰かに捕まるべきだったとの(考えであった由)。
談取以籠り候ト云候(だんどり、もって、こもりそうろうと、いいそうろう)。段取りをしてから(屋敷内に)籠ろうと言った。談=段?
被為拝領自分之知行三百石者(はいりょう、なされ、じぶんの、ちぎょう、さんびゃっこくは)。(権兵衛に)拝領されて自分の知行である三百石は(召し上げられた)。
於御寺不届之仕方有之(お寺にて、ふとどきの、しかた、これあり)。お寺で注意の足りないことがあって。