光尚君御家譜抜書 3
天祐和尚下向有之於泰勝寺重支御追善御執行
御當日ニハ殉死之子共御寺詰次第之ごとく焼香被
仰付候然處ニ阿部権兵衛者焼香申上ると一同に髪を切
備置帝退候を詰衆見帝お心与里の事ニ阿らし登
各取懸り押當て子細を問候ニ述懐之積ニ而遁世のよし
申候得共時所をも不顧法外之振舞なる故追天
御聴尓達し候処甚御機嫌悪鋪(しく)早速禁籠以誹被
くずし字解読
重支御追善(おもき、ごついぜん)。重大な追善(が執行される)。「支」は、ひらがなの「き」と読みます。
(御寺詰)次第之ごとく(しだいのごとく)。寺に集まり次第このように(焼香を仰せつけられる)。
備置帝退候を(そなえおきて、しりぞき、そうろうを)。供え置いて退くときに。「備」は「供」の当て字です。
詰衆見帝(つめしゅうみて)。詰めていた人たちが見て。「帝」は「て」で、頻繁に出てきます。
お心与里の事ニ阿らし登(おこころ、よりの、ことに、あらじと)。乱心したのかと。与(よ)、里(り)、阿(あ)、登(と)などはいずれも常用の変体かなです。覚えておきましょう。
各取懸り押當て子細を問候ニ(かく、とりかかり、おしあて、しさいを、とい、そうろうに)。それぞれが(権兵衛に)取り掛り押えて、子細を問うたところ。
述懐之積ニ而遁世のよし(じゅつかいの、つもりにて、とんぜの、よし)。自分の思いを述べることで、出家するとのことであった。
法外之振舞なる故追天(ほうがいの、ふるまいなる、ゆえ、おって)。とんでもない振る舞いをしたので、追って。
御聴尓達し候処甚(おききに、たっしそうろう、ところ、はなはだ)。これらの事件が殿様(細川光尚公)に伝えられたところ。殿様は甚だご機嫌が悪く、さっそく牢に閉じ込め、そしる(悪者のレッテルを貼る)ことを命令された。