九代 高見権右衛門武久 (28)

熊本大学付属図書館所蔵 高見家文書 #1001

天保八年七月四日御嫡子様御届ニ付初發より被是致心配候ニ付

九曜御紋附御上下一具 同御紋附晒御帷子一 薄御袴一具従

若殿様被下置候旨於詰間清成八十朗申渡候 同日

若殿様御筆一枚於 御前被下置候 天保八年八月朔日

御紋附御上下一具 同御帷子一 若殿様御縁組御用掛相

勤候ニ付被下置候旨龍ノ口於 御殿九郎左衛門殿被申渡候

天保八年十二月朔日 兼々出精相勤候ニ付 嶋縮緬御小袖一外ニ

御烟草入一組 焼物(火+召=昭)徳利一 紙入表切レ一 蓮性院様於

御前被下置候 天保八年十二月十三日 来春御國許江休息被 

仰付旨御達ニ相成候 天保八年十二月二十五日 嶋縮緬一反

御扇子弐本 御盃一 若殿様 御前被下置候

天保八年十二月二十五日 當年格別御用多之処無御問抜出様相勤

候ニ付 五三桐御紋附横麻御上下一具 葉桜御紋附縮緬御小袖一

別段 八丈嶋 一反龍ノ口於御次御内々被下置候

天保8年7月4日 嫡子様の届けについては、初めから心配りをしたので、九曜の紋附上下一式、同紋附晒帷子(さらしかたびら)を一つ、薄袴一式を若殿様から戴けるという旨を詰の間において、清成八十朗(御近習二百石)から申し渡された。

同日、若殿様のお筆一枚を御前で戴いた。

天保8年8月1日 紋附上下一式と、帷子を一つ、若殿様の縁組ご用掛を勤めたので戴けるという旨を龍ノ口上屋敷において、御殿様から九郎左衛門殿へ申し渡された。

天保8年12月1日 兼々仕事に励んだので、嶋縮緬小袖を一つと外に煙草入れ一組、焼物のショウ(火+召)徳利を一つ、表切れの(表面から出し入れする?)紙入を一つを蓮性院様の御前で戴いた。

天保8年12月13日 来春には熊本へ休息を仰せ付けられる旨のお達しがあった。

天保8年12月25日 嶋縮緬一反と扇子を2本、盃を一つを若殿様の御前で戴いた。

天保8年12月25日 今年は格別のご用が多かったので、このところ御問(おあいだ=不用になったとき)に抜け出す様子もなく精勤したので、五三桐の紋附横麻上下一式、葉桜の紋附縮緬小袖を一つ、特別に八丈嶋一反を龍ノ口上屋敷の次の間で内々に戴いた。

くずし字解読

左の画像は上記12行目だが、分解すると「當年格別御用多之処」(とうねんかくべつごようおおしところ=今年は特別に仕事が多く)、

「無御問抜出様相勤」(おあいだぬけだすためしなくあいつとめ=所定の場所から抜け出すこともなく勤め)

「候ニ付 五三桐御紋附」(そうろうにつきごさんきりごもんつき=ので五三桐のご紋付)

「横麻御上下一具」(よこあさおんかみしもいちぐ)横麻=横糸に麻、縦糸に絹を用いた織物。

「葉桜御紋附」(はざくらごもんつき=葉桜のご紋付)

「縮緬御小袖一」(ちりめんおんこそでいち)

現代語訳すると、今年は特別に仕事が多く、持ち場を抜け出すこともなく勤めたので、五三桐の紋附横麻織の裃一揃い、葉桜紋付縮緬の小袖を一つ(それぞれ頂いた)。