夢ものかたり

熊本大学附属図書館 高見家文書 #5013-2

夢毛の可多理 七十二翁 廣川

東照神君といへる聖主廼(の)

治めたまへる、大日本能國も、時や

来里けむ(介無)。多ゝ可者須し天、於のつ可ら

三百年も、治平を多も知堂る

國主爵位も、ともにあつ歟(か)り給へり

し國乎、天朝尓返し末つ禮る

世尓、生禮逢つるも、夢の心ち世良

留禮。おの連、天保十四年といふ尓

生連いてゝ、人と奈る尓徒そ、時世の

うつ李か者里し事を、於もへ盤、

又、夢能中のゆめ奈李計李。

そ能ゝ知、西郷のミ多禮い天き亭よ里、

日清の多ゝ可ひと奈里、日露の争と

な連るも夢な里介り。位高く、世

尓聞へ多る、君多知の世乎、左李

多まふ尓盤、細川護久公を初め

近衛篤麿、長岡護美、細川

護成矦打つゝ(打棄つ)きて、交者里し

人尓盤、木下廣次、佐々友房、池辺

吉太郎なと、世尓志ら禮多る人々も

夢と消天、あとなし。まを須も、かしこ介禮と。

明治天皇、照憲皇太后を者しめ

多天末津里、於もひも可介ぬ、ゆめ登消

賜ひぬ。猶臣尓者、乃木大将夫妻

其他志る須尓、いと満あら須。ミ奈

夢と奈里ぬる乎、於もへ者世尓殘る

毛の那し。雪花紅葉も皆

夢と見る/\よそのことく於もひ

奈して、おとろく那し。口尓のミ語り

天まことの夢能こと者里乎志る

人那し。唯釋尊者其おろ可

奈る心乎さとし天、此世尓有うち尓

思ひ無すぼ(結)本禮(ほれ=解れ)多るをと紀て、こゝろ

思ひむすぼほれたるをときて、こゝろ

安く過し天よと、教乎のこし給ふ

大慈大悲の心こそ末ことの夢を

志里給へるこそたふと可李

氣連。

 

 花も美知ゆ幾母

 きえ天盤るおとも那し

 何可常なる世の中

 能こ登。

 

 こ盤源氏物語乃ゆめ能

 浮橋といつる巻の心耳(に)

 奈ら非天、おの連可、過來つる

 まのあ多り見多るゆめ乃

 於も可介乎、かひ付多る毛の

 な李

大正三年十二月廿七日

    しる須。 判

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